140字の外

140字に収まらないもの置き場です。始まりは天保十二年のシェイクスピア。

王家の紋章①

 

王家の紋章my初日、8月7日マチネ。

今週末は時間がたっぷりあるので久しぶりに初日の感想を残しておきたいな、と思いブログを開いてみました。1回目の感想ってフレッシュなので、自分で後から見返した時に面白いんですよね。何度か観ることが分かっている作品なので、とりあえず初回の感想を記しておく。

とはいえ1回しか観ていないのであんまり大したことは多分書けないんですが!ゆるゆると初回に思ったことを書き綴ります。

 

 

さて、私にとっての初生王家、キャストの皆さんはこちら。

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前回公演のDVD(新妻キャロルver.)は昨年買って見ていたので、ストーリー自体はだいぶ把握していたんですが、大分キャストがガラリと変わっていたので中々印象が変わるな〜〜と思いました。初演、再演を生で観ていた方はよりそれが強いんだろうな。私は「お〜やっぱり変わるな〜〜」ぐらいの気持ちで観ていました。

 

というわけで以下、印象に残ったキャストの皆さん、もしくはキャラクター本体、の諸々をざっくり箇条書きしていきたいと思います!

 

 

浦井メンフィス、生で観ると無条件でメンフィスの女になる仕様だった

はい、まずは浦井メンフィスについて。

去年DVDで観た時、うらいさんのメンフィスももちろん観たわけなんですが、正直その時は「うわ〜〜お顔が華やかだからカラーメイクめちゃくちゃ映えるな〜〜」とか「マントさばきかっこよ〜〜〜マントの間入りこんで巻かれた〜〜〜い」とか「こんなにぶっ飛んだ衣装(古代エジプト人なら普通なのかもしれないけど、現代日本人の目から見ると短パンにきらっきらのマントにブーツという中々斬新な格好)で、俺様通り越して話通じなさそうすぎて怖い(これまた当時のエジプト人の価値観からしたら普通なんだろうけど以下略ですね)キャラなのに、総合的に格好良い人物として成立させるのすごいな〜〜」とか(長い)、そんなことを思っていて、

「メンフィス!キャッッッ」って感じにはならなかったんですよね。そもそも俺様キャラがそこまで刺さってこなかったタイプなのと、やっぱり画面の中で見ちゃうとちょっと気分的には引きで見てしまうので、ツッコミどころを突っ込む脳内係が盛んに「えっメンフィスそこは怒らなかったのにそこは怒るんだ?」「いや意外とちょろいな……?めちゃすぐ恋に落ちるじゃん……初恋少年やんメンフィス……(それは実際そう)」とか騒ぎ出してしまう。なので純粋に「メンフィスかっこいい〜〜!!!」とはならず。なので、メンフィスそのもの、というよりは浦井さんが演じているメンフィスという概念というか、浦井さんとメンフィスの中間の場所でひゃ〜〜〜〜ってなっていたような感覚でした。

 

ところがどっこい、今回生で、帝国劇場で、メンフィス様に謁見したところ

開始数秒、あっという間にメンフィスの女にされました

先程メンフィス様にちょろいとか言ってましたがすみません。私の方が10000倍ちょろかったです。

あれ、おかしいな…?2階席だったはずなのに…………?おかしいな……………?と思ったんですけどあれですね、あのメンフィスとかいう人、帝劇全体をあのキラキラマントで包んでまるごと自分のの女にする魔法を使ってるんじゃないですか……………?使ってますよね………?怖いですね……………???

 

はい、そんなわけで生で観るメンフィスにしっかりやられてきました。

これはTwitterにもちょろっと書いたけれど、とにかく圧倒的ファラオ感がすごい。歩き方、声、話し方、目線、姿勢、こうやって言語化できる範囲外の部分もその全てが「有無を言わせない古代エジプトの王ファラオ」としての存在の説得力となって客席に飛んでくる。2階席で観ていて、裸眼で舞台観ていてもぶわっと迫ってくるようなオーラがあったし、オペラグラスを覗いても細かい表情や仕草から、あぁこの人は王になるべくして生まれ、王になる者として育てられ、彼自身もそれを自明のこととして生きてきて、そして今実際に王として在ろうとしているのだなと伝わってくる。「少年王」の「王」の部分ですね。若かろうが王になったばかりであろうが、もうメンフィスは存在が圧倒的に王なんですよね。

ちなみに個人的に「少年」の部分を感じたのは、序盤でアイシスに向かって「姉上!」って嬉しそうに言うところ(弟みがあって可愛い)と、キャロルとぷいっ!ってしあってるところですね。男子中学生か!!!!かわいいな!!!ってなりました。恋心を自覚してからどう振舞っていいかに辿り着くまでに時間がかかるのが最高に男子中学生みがあって、あの圧たっぷりの見た目とのギャップも相まってかわいいですね。あとは浦井さんご本人の若々しさというかフレッシュさというか真っ直ぐさというかかわいらしさというか(長い)、そういうファラオとしてのメンフィスの方には表れてこない部分のご本人の資質が、「少年」の面にはばっちり上手く作用していて素敵だなあと思いました。流石は奇跡の40歳(©️井上芳雄さん)ですね。

 

 

はるかキャロル、可憐

キャロルの木下晴香さん、生で見たのは今回が初めてでした。最初のイメージがジャスミンなので、強い、格好良い、毅然としている、みたいな印象が強かったんですが、今回のキャロル、めちゃくちゃ可憐………!かわいい。

ご本人の年齢もあるんだろうけど、本当に古代の異国に迷い込んでしまった頼りなげな、でも芯は強い少女感がある。

冷静に考えて、いくらエジプトに興味があるとはいえ、若い女の身で古代エジプトに突然飛ばされたらすごい怖いじゃないですか。そのキャロルの不安や混乱や絶望感が、木下さんを通すと程よくリアルに伝わってくる感じがある。どこか初々しく、無邪気で危なっかしい幼さ(若さ)や、華奢で色白で、少し傷付けたら壊れてしまいそうな(これは特にメンフィスから見た場合にはそうなんじゃないかな)身体性が、キャロルに良い塩梅でリアリティを与えているなぁと思いました。あぁ、これだけ存在として、生物として、立場的に「弱い」存在なのだから、そりゃ古代のエジプトもメンフィスも怖いよなぁと。キャロルに対して感情移入とまではいかないけど、近い視点の位置に入りやすくなる感じ。うーん、まだ上手く言語化できないけど。するっとあの古代エジプトの世界にキャロルの視点で入りやすくなるなと。

ただキャロルというキャラクター、細いけど太い、弱いけど強い、怖がる割に無鉄砲、みたいな二面性が常にあるなと思うんですが、その「強い」方の面も、はるかキャロルはちゃんと備えていて、その匙加減が結構私は好きだなぁと思いました。強さが見える部分では木下さんの芯の強そうな感じがふっと表れていて、あっやっぱりあのジャスミンの人と同一人物なんだなと思い出しました。逆にそれまで忘れてたからすごい。

で、その根の強さが、最初に「弱さ」が見えているからこそ映えるというか。キャロルの強さってなんて言うか、メスゴリラ的な強さじゃないんですよね(もう少しましな例えはなかったんか)。いかにも強強!って感じじゃなくて、最初は怯えてるし、華奢だし、白いし、感情的だし、すぐ泣いちゃうし、きゃっきゃしてる表情豊か女の子って感じがするのに、火事場で見せる底力がとんでもないなこの人……実は一番最強なタイプじゃん……みたいな強さ。そのキャロルの強弱の二面性みたいな部分において、はるかキャロルのその匙加減が私は結構好みだなぁと思いました。

 

 

 

メンフィスのキャロルの体格差

ちょうどメンフィス、キャロルと続いたのでこの話をします。

浦井メンフィスとはるかキャロル、体格差が天才だった。キャロルがヒール履いてるからそこまでの身長差はないんだけれども、あまり身長差がないからこその体格差が目立つといいますか。

あの重いマントをばっさばっさと振り回すメンフィスの太く色黒な腕と、キャロルの少し力を入れたら折れてしまいそうな白い腕。鍛えられた厚みのあるメンフィスの胸板と、誰でもすっと抱えられ、持ち上げられてしまいそうなキャロルの細い腰周り。

それはそのまま古代エジプトでのあの二人の立場の強さ(弱さ)を表しているようで。絶対的な王であるメンフィスと、メンフィスの命令一つでどうにでもなってしまうキャロル。その後関係性が変わっていくことで、その強弱の立場も揺らいでいくわけですが、とはいえ根本的には変わらないと思うんですよね。未来の異国から飛ばされてきたキャロルは、メンフィスに見捨てられてしまえば恐らくあっという間に命を落としてしまう。まあキャロルもそれに怯えて言うこと聞くようなキャラクターじゃないし、そういう物語でもないんですけど、それでもあの二人の強↔︎弱の対比性みたいなものが、男↔︎女、王↔︎奴隷(→王↔︎王妃)、古代エジプト↔︎現代アメリカ、「王とその他(殺してもいい存在)」の価値観↔︎「全て皆人間(生きる権利が守られるべき)」の価値観……etc.のその他の対比のベースになっているような気がするので、やっぱりそこの対比は重要なのかなと思うんですよね。なので、お二人の身体性がめちゃくちゃ説得力あって良かったな〜〜と。

うん、と、長々書いたけど単純に体格差にきゅんときたという話です。最高でした。

 

 

 

 

えっと、ちょっとこれは書きながら思ってたんですけど完全にペース配分を間違えましたね……

各キャストの方々についてさらっとこういう印象だった〜〜〜!!!楽しかった〜!!!っていうのを、さらっと!並べていくつもりだったんですけど、いかんせん書きたいままに書きまくっているのでメンフィスとキャロルの話だけでこんな長さになり、ちょっと本日の体力が尽きてしまいました………

せめてイズミルアイシスのことは書きたかったんですけど一旦切りがいいので①はこれで閉じようかなと思います。

 

 

 

 

さて私にとっては初回である今日、王家の紋章を2階席からたっぷり楽しませていただきました。

正直この時期に行っていいものか悩んだし、今も悩んではいるけれど、色々考えた末行くと決めて観てきたものに関しては、たっぷり味わえる限り味わい尽くしたいし、それについて沢山話したい、書きたい。せっかく観られた幸せをちゃんと噛み締めつつ、心の中で大事にしたい。

ので、たぶんこの先もいくつか続けて書けたらいいなぁと思います。

 

2021年の王家の紋章、改めて幕が開けたことをとても嬉しく思います。無事に最後まで走り抜けられますように。一観客として心より願っております。

ひとまず、

ありがとうございました!